レシピエント背景とQOL調査に関する原著論文をサクッと批判的吟味
こんにちは、ちびパパナースマンです。
さっそくですが、僕の看護師歴を簡単に下記に示します。
- 看護師歴:15年
- 認定レシピエント移植コーディネーター歴:5年以上(専従)
こんな感じで日々患者さんやご家族、施設や地域の医療・看護への貢献、なにより僕の家族のためにコツコツ頑張っています。
少し古い論文ですが、サクッと批判的吟味しました。
※なお、本格的な批判的吟味ではなく、あくまでサクサク〜〜ッとですのであしからずm(_ _)m
腎移植を受けたレシピエントの背景とQOLに関する調査【原著論文】
https://ci.nii.ac.jp/naid/120002307735
Yuko HAYASHI, Investigation of Quality of Life in Kidney Transplant Recipients
Bull Fac Health Sci, Okayama Univ Med Sch 12: 37-44, 2001
(Original article)
背景
・腎移植後レシピエントのQOL向上を目指した看護援助を検討するために、移植後の QOLに影響すると考えられる、移植を受けた理由やそのときの気持ち、ローカスオブコン トロールをとりあげた。
目的
・レシピエントの背景がQOLとどのように関係しているのかを明らかにする。
対象者
・研究の同意 を得た腎移植後のレシピエント 119名
データ分析
・データ解析には、統計パ ッケージHALBAU Ver4を用いて記述統計並びに推測統計を行った。
・QOLを構成する5因子 (社会 ・経済的な機能、家族の姓、情緒的な支え、身体の健康、安 らぎと幸福)について、移植を受けた理由および移植に臨んだときの気持ちの異なる群を比較検討するためにt検定を行った。
・特に移植の理由では、 「生活 をより充実させたい」と 「透析が嫌」 と回答した群を比較する。これは移植の理由が「生活に向けて前向きである」ことと、「単に透析が嫌であるという感情」の違いが、移植後のQOLに相違をもたらすかどうかを比較検討するためである。
・また、LOCがQOLの構成因子と相関関係があるかを検討するためにピアソン積率相関係数を求めて推定を行った。
・次に、移植を受けた理由や移植に臨んだときの気持ちと性別、年齢、学歴、就労状況、ドナー腎の関連を検討するためにx2検定を行った。
結果
・レシピエントは移植後に何らかの身体症状や合併症 が生じていても、81%の者が人生を肯定的に感じていた。
・そして生活を充実させたいとして移植を受けた者が、また、ローカスオブコントロールの内的統制傾向が強い者ほどQOLを高める傾向にあった。
考察
1.人生に対する感じ方について
腎移植後の生活は慢性腎不全患者にとって大いに満足できるものとなっていることが明らかにされた。
看護婦はレシピエントに起こりうる身体の問題と共に、生活上の問題について継続して意図的に関わっていくことが重要になるであろう。
2.QOLの構成因子と移植を受けた理由、移植に臨んだときの気持ちおよび LOCの関係について
「生活をより充実させたい」として移植を受けた者の方が、社会 ・経済的な機能や家族の絆において高い水準で有意差が認められたように,、そのようなレシピエントは家庭や社会の中で生活をより充実させる目標を持って生活ができていることが伺える。
3.LOCについて
AbbeyらがQOLと関係する社会心理学的変数の一つとしてLOCを取り上げ、自分自身による生活のコントロール感がQOLに肯定的に関係していることをモデルのなかで示している。
本研究においても同様に,内的統制傾向が強い者ほどQOLを高める傾向が示された。保健行動では内的統制の強い者ほど健康的な行動を自主的にとるといわれており、個々人の LOCを考慮して関わっていくことが大切であると思われる。
結論
・看護婦はQOLに影響を及ぼすレシピエントの背景を加味して、移植前から適切な看護援助を行う必要性が示唆された
(注) 原著で「看護婦」と表記されていますのでそのまま表現しております現在は「看護師」です。
批判的吟味
論文のPECO
P:腎移植後レシピエント
E:質問紙内的による内的コントロール群
C:質問紙内的による外的コントロール群
O:QOLの違い
Research Question
F:実現性→◯
I:科学的興味→◯
N:独自性→△
E:倫理性→△
R:切実な問題→◯
結果
・研究バイアス(選択・測定バイアス)がかかっている可能性があり
・実行バイアスがかかっている可能性あり→交絡因子の調整は?
統計解析は妥当性
・多変量解析による交絡因子の調整や分析が最低限必要であろう
結果と考察との論理的整合性
・実施した統計解析は検討の余地があるが、各統計解析に対する考察は統合性が取れている
・特に、p値から結果を言い切らず、示唆(可能性)の記載に留めていることに関しては→◯
まとめ
・いまだ看護の研究や学会などでは、「t検定で有意差があったので〇〇と言い切れます」というような発表を見聞きする。これは"過誤"の視点からも注意しなければならない。
・p値に有意差がみられてもそれだけで「差がある/ない」とは言い切れないこと
・最低限、「p値は、帰無仮説が正しいという前提において、それ以上、偏った検定統計量が得られる確率」を示している。それ以上でも以下でもない、ということを知る必要がある。
・そのうえで、p値だけでなく(看護界は異様にt検定とp値が大好き)、結果を95%信頼区間で示す選択肢も知らなければならない。
ではまた〜〜( ^_^)/....
※QOLの観点から考えると、子供の成長・発達への視点を持つことも欠かせません。
子供の月例差に関する記事も合わせてどうぞ。